妊娠安定期っていつから?体と心の変化を助産師がわかりやすく解説

妊娠
妊婦さん
妊婦さん

安定期ってよく聞くけれど、具体的にはいつからなの?

助産師<br>きいちゃん
助産師
きいちゃん

妊娠中の方なら一度は聞いたことのある“安定期”という言葉。でも、実際にはいつから始まるのか、何が安定してくるのか、はっきりわからず不安に感じることも多いですよね。
安定期の具体的な時期と、この時期に起こる変化について解説していきます。


本記事では助産師の視点で「安定期とはいつからか」「身体と心の変化」「よくある質問」について、わかりやすく解説します。これから安定期を迎える妊婦さんやそのご家族に役立つ情報をお届けします。

1.安定期とは?いつからいつまで?

安定期とは一般的に妊娠16週から27週までを指します。この時期は妊娠中期と呼ばれ、つわりの症状が治る、または軽くなり、体調がそれまでと比較して落ち着くことが多い時期となっています。
しかし、「安定期」という言葉は医学的に正式な用語ではなく、決して完全に安全な時期ではありません。「赤ちゃんをお腹の中で育てる」、「だんだんと大きくなってくるお腹で生活をする」、それだけで普段とは全く異なる体の状況になります。安定期に入っても、定期的に妊婦健診を受け、健康管理に向き合っていくことが大切です。

胎盤が完成してからの時期が安定期

胎盤は妊娠15週ごろに機能的に完成します。赤ちゃんが胎盤から効率的に酸素や栄養を受け取れるようになり、妊娠継続のためのホルモンも安定的に分泌されるようになることから、流産のリスクも低くなる時期です。実際に、流産・死産の85%は妊娠初期に起こっていることがわかっています(1)。

2.安定期に起こるママの体の変化と心の変化

ママの体の変化

【ポイント】

  • 
多くの妊婦さんがつわりのつらさから解放され、食欲が戻る時期です。
  • お腹が徐々に大きくなり、18週頃から胎動を感じ始める人も増えます。
  • 
便秘や腰痛、むくみなど妊娠特有の症状が現れやすくなります。

つわりが落ち着く

つわりの重症度や続く期間は個人差が大きいですが、多くの場合には12〜16週には症状が消失すると言われています(2)。このため、安定期はつわりから解放され、食欲が戻ってくる時期となっています。

胎動を感じる

16週〜20週ごろには胎動を感じ始める方が多いですが(2)、個人差が大きく、経産婦さんか初産婦さんかでも異なるようです。22週ごろにはほとんどの方が自覚できるようになります

万が一、それまで自覚していた胎動が少なくなってきた、無くなってしまった、という場合には、早めに受診をしましょう。お母さんの早い気づきが、赤ちゃんを救うこともあります。

お腹が目立ち始める

妊娠中期以降、お腹がだんだんと大きくなり始め、周囲からも気づかれることが多い時期になっていきます。急激にお腹の皮膚が引き延ばされることにより、妊娠線もできやすくなる時期になっています。

妊娠線予防クリームなどを使用して、対策していきましょう。

マイナートラブルが始まる人も多い

妊娠中期はつわりが落ち着き、比較的体調が安定している方が多い時期でもあります。
一方で、お腹が大きくなるのに伴い、徐々に「マイナートラブル」と呼ばれる新しい不調が出始めるのもこの時期です。妊娠を維持するためのホルモンや、赤ちゃんの成長に伴ってママの体に負担がかかることが主な原因です。
一人で抱え込まず、ご自身の体に合った対策を見つけて、無理のないマタニティライフを送ることが大切です。助産師や医師に相談することで、効果的な対処方法を教えてもらうことも出来ますので、ぜひ相談してくださいね。

便秘

・大きくなった子宮が腸を圧迫すること
・プロゲステロンというホルモンの影響で腸の動きが悪くなること

この2点が原因で便秘になりやすくなります。

対処方法
  • 1日1.5〜2L程度を目標に水分を摂取しましょう
  • 無理のない範囲で運動を日常生活に取り入れましょう
  • 野菜を多く摂るようにしましょう
  • どうしても解決しない場合には健診のときに相談しましょう
足のむくみ

妊娠高血圧症候群の場合には症状としてむくみが出てきます。たとえ原因となるような合併症がなくても、30%の妊婦さんにむくみが症状として出てきます(3)。

原因① 血管の外に水分が出やすい状態になっている

妊娠中には分娩時の出血に備えて、全身の血液量が通常の140%にまで増加しています。この時、血液の中の水分(血漿)が特に増加量が多く、血液は通常よりも薄まった状態になります。これにより、血漿膠質浸透圧(水分を血管内に保ち、組織に水分が出て行かないようにする働きがある)が減少します。

原因② 下半身の血流がせき止められる

子宮が大きくなるにつれて、下大静脈が圧迫されることで、血液の流れがせき止められてしまい、その結果下半身のむくみとなります。

対処方法
  • 着圧ソックスを履いてみる
  • 座布団や枕などを重ねて、足を高くあげた状態で寝るようにする
    (お腹が張ってくるようであれば中止してください)
  • 長時間同じ姿勢で過ごすことを避けましょう
  • 足をパタパタと動かして、ふくらはぎの筋肉を動かしてみましょう
腰痛・恥骨痛

お腹が大きくなることで、重心が前に移動します。それを支えようとすることで腰に負担がかかります。
また、出産のときに赤ちゃんが骨盤を通って外に出やすいように、関節同士のつながりを緩めるようなホルモン(リラキシンというホルモン)が出ています。このせいで腰や恥骨の関節が緩まり、痛みが出てきます。

対処方法
  • 産前より使える骨盤ベルトを使ってみましょう
  • ストレッチをして骨盤周りの筋肉をほぐすようにしましょう
  • 反り腰にならないように、「頭の先から糸が伸びて天井から吊るされている」イメージで立ってみるようにしましょう
貧血

問題のない分娩であっても、多い人の場合には500mlペットボトル一本分の出血があります。異常出血の場合には1L以上の出血がある場合もあります。
出血に備えて血液量が増えます。しかし、血液内の水分成分が増えるため、血液が薄まり、相対的に貧血になりやすくなります。

対処方法
  • 赤身のお肉を摂取するようにしましょう。牛肉>豚肉>鶏肉の順で鉄分が多く含まれています。
  • ビタミンCを多く含む野菜と一緒にお肉を摂取しましょう。鉄分の吸収が良くなります。
    (切った時に中まで色のついている野菜、ピーマン、にんじん、ほうれん草などがおすすめです)
  • 妊婦健診のときに鉄剤が処方されている場合には、毎日決められた量を、決められた時間に内服するようにして下さい

ママの心の変化

妊娠中期には心も落ち着いてくる時期です。
つわりが落ち着き、体調が安定すると、気持ちも前向きになってきます。赤ちゃんのことを考えてワクワクしたり、マタニティライフを楽しもう!という気持ちになりやすいです。

「母親になる」という実感が湧いてくる

胎動を感じ始めることで、今まで少しずつ感じていた「母親になるんだ」という気持ちが強くなっていきます。
また、お腹が大きくなってくることで、周囲にも妊娠していることが知られ、配慮や嬉しい声掛けを受けることが多くなってくるでしょう。
このような対応を受けることも、母親になる自覚を強めていきます。

赤ちゃんへの愛情も強くなっていく

お腹の中に確かに赤ちゃんがいる、という感覚が強くなってくると、赤ちゃんへの愛着(赤ちゃんとの心の絆)が強くなっていきます。
可愛い、愛おしい、と感じる気持ちも強くなっていくでしょう。
聴覚が発達し始めるのも妊娠20週(5ヶ月)ごろからです。
たくさんお腹に触れて、たくさん話しかけてあげてください。赤ちゃんはお腹の中で、ママの声が聞こえるのを楽しみに待っています。

3.よくある質問

安定期の旅行

妊婦さん
妊婦さん

安定期にバカンスや旅行に出かけても良いですか?

助産師<br>きいちゃん
助産師
きいちゃん

マタ旅と呼ばれるものですね。

基本的には妊娠中の遠出や旅行はおすすめできません

普段と違う行動をすることで、お腹や体調に負担がかかり、予期出来ない異常が起こる可能性もあるからです。
それでも旅行に行く場合には、自己責任となることを覚悟した上で、万全の対策を立ててください。

助産師<br>きいちゃん
助産師
きいちゃん

【マタ旅に行く時に注意して欲しいこと】

・必ず母子手帳、健康保険証、診察券 を持参する

・移動はこまめに休憩を取る

・車で移動する場合にはシートベルトを必ず着用する

・体調が少しでも優れない場合には、予定を変更し、横になれるような環境を確保する

出血、破水、お腹がいつもよりも張る、お腹の張りに合わせて痛みがある、などの症状が出た場合には、必ず主治医に連絡し、今後の対応について指示を仰ぐ

・旅行中に妊婦が受診できる医療機関を調べておく

まとめ

安定期は妊娠の中でも比較的過ごしやすい時期ですが、常に体調の変化に注意しながら無理をしないことが大切です。日々の生活で健康管理をしっかり行い、異変を感じたらすぐに医療機関に相談してください。母子ともに健康な妊娠期間を送り、赤ちゃんの成長を楽しみましょう。

次の記事では、妊娠中期の過ごし方について解説していきます!

【参考文献】
1.厚生労働省. 母子保健の概要. 厚生労働省ホームページ; 2021. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000864366.pdf [Accessed 2025 Aug 10].
2.国試対策問題編集委員会編.レビューブック産婦人科2022-2023.東京:株式会社メディックメディア;2021.
3.田中美帆. 妊娠期女性における心理学的研究の現状と課題 インターネット. 2016.Available from : https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/kernel/81009712/81009712.pdf [Accessed 2025 Aug 10]

看護大学卒業後、総合病院の産科病棟で看護師として経験を積み、助産師学校へ進学。現在は大学病院の周産期センターで多くの命の誕生に立ち会う助産師として勤務しながら、公衆衛生大学院への進学も視野に入れ、仕事も勉強にも全力投球しています!

ハイリスクな妊娠・出産などにも携わる中で、赤ちゃんが健やかに育つには、お母さんとご家族へのきめ細やかなサポートが不可欠だと痛感。さらに、妊娠前から全ての女性が心身ともに健康であることの重要性も強く感じています。女性とそのご家族の心と身体に寄り添い、赤ちゃんがその子らしい笑顔で育つ未来を支えられるよう、日々のケアを大事にしています。

このブログは、妊産婦さんとご家族、子育て中の全ての方の「知りたい」を解決するだけでなく、看護・助産学生さんの学習に役立つ情報を発信しています。現役助産師として、臨床のリアルな視点から、妊娠前からの健康、出産、育児の不安を解消し、明日から活かしていける情報をお届けします。

助産師きいちゃんをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました